ラグビーワールドカップ1995南アフリカ大会決勝

1995年6月24日土曜日

Johannesburg Ellis Park Stadium 収容客数59,611人(テレビ観戦)

15 - 12 SPRINGBOKS地元開催のW杯で初出場初優勝

オールブラックス

怪物ロムーの爆発はあるか

準決勝のEngland戦で4トライの大活躍をみせたWTBジョナ・ロムー。195cm118kgの巨体が10秒台で走りステップを踏まれたら、止めるのは極めて困難。特に1トライ目のEnglandのFBマイク・キャットを正面から弾き飛ばして決めたトライは衝撃的だった。このトライの映像は、現在でもラグビーW杯史上最も有名なトライとして何度も紹介されている。その他のメンバーもSHグレアム・バショップ(パス捌きが上手くロングパスもボックスキックも巧み)、SOアンドリュー・マーティンス(正確なキックでPG・DGで得点する。パスもランニングも一流)、キャプテンのHOショーン・フィッツパトリック(3大会連続出場のベテラン)、No.8ジンザン・ブルック(準決勝のEngland戦でDGを決めた「史上最高の万能FW」)と世界的名手が揃う。

SPRNGBOKS

地元優勝なるかSPRINGBOKS

SPRINGBOKSは1984年から8年間国際試合が出来ず、第1回第2回W杯は不参加の為今回のW杯が初出場となる。1994年の全人種参加選挙により選ばれたネルソン・マンデラ大統領は、国民融和の象徴としてのSPRINGBOKSを支援していた。その状況はクリント・イーストウッド監督の映画「INVICTUS/負けざる者たち」に詳しい。キャプテンでFLのフランソワ・ピナール(攻守に体を張ってチームを牽引)、FBアンドレ・ジュベール(当時世界一のFBとされ左手を骨折しながらサポーターを装着して出場し完璧なハンドリングをみせた)、SHユースト・ファンデル・ウェストハイゼン(188cmの大型SHで9番目のFWと称された)、WTBチェスター・ウィリアムズ(黒い真珠と呼ばれたチーム唯一の非白人メンバー)といったメンバーが地元開催でのウェブ・エリス・カップ獲得を目指す。

ドラマチックな初優勝

試合が始まる前から異例づくめだった。試合前のセレモニーではネルソン・マンデラ大統領がSPRINGBOKSのラグビージャージで登場し両チームを激励。試合開始の数分前にはスタジアムの上空(地上から100mの超低空)を「GOOD LUCK BOKKE(スプリングボクス頑張れ!)」とメッセージの書かれた南アフリカ航空のジャンボジェット機が飛びスタジアムを沸かせた。

後日譚になるが、ALL BLACKSのメンバーはこの試合の2日前の木曜日の昼食後、何らかの中毒症状を起こしていたらしい。同行していた医師によると昼食時のコーヒーが原因だと思われるというが、真相は闇の中。決勝では体調不良を訴えるメンバーも試合に出ていたらしい。その話を聞いて試合を見返すと、確かにALL BLACKSのWTBジェフ・ウィルソンは顔面蒼白で途中交代していたのが合点がいく。

試合が行われたのはJohannesburg。標高1,700mの高原地帯に位置し、空気抵抗が少なくキックしたボールが良く飛ぶ。しかもEllis Park Stadiumはグラウンドが硬くボールが良く跳ねる。その為このスタジアムでの試合はキッキングゲームになりやすい。ALL BLACKSはこのスタジアムが苦手でSPRINGBOKSに対し2勝4敗と分が悪い。92年8月の対戦でも 27-21 と勝利したが後半追い上げられる辛勝だった。

この試合ではSPRINGBOKSによるALL BLACKSの怪物WTBジョナ・ロムー封じが見事だった。正面から当たらず外側へ追い込んで右足の外股にタックル、を徹底していた。特にSHユースト・ファンデル・ウェストハイゼンや対面のWTBジェームス・スモールが果敢にタックルし大きなゲインを許さなかった。前週の準決勝のEngland戦での活躍が嘘のように陰を潜めていた。もしかすると彼にも体調不良があったのかもしれない。

試合は延長戦にまでもつれ込む熱戦で最後はSPRINGBOKSのSOジョエル・ストランスキーのDGで勝敗が決した。この試合とこの大会は、時代背景も含めるとあまりにも内容が深く複雑なので、その描写は筆者の手に余る。是非JSPORTSラグビーワールドカップ100選!」と、先述の映画「INVICTUS/負けざる者たち」を合わせて観て戴きたい。映画では名優モーガン・フリーマンマット・デイモンの熱演がラグビーの魅力を伝えてくれる。

投稿者

ラグビー好きの食いしん坊

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