2023年9月17日日曜日
ラグビーワールドカップ2023フランス大会予選プールD組
Nice Stade de Nice 収容客数35,983人(テレビ観戦)
34 - 12 England勝利
王座奪還を狙うラグビーの母国
イングランド代表は9日にマルセイユで行われたアルゼンチン代表戦で、序盤にFL(フランカー)トム・カリーが退場で14人と窮地に立たされた。しかし、SO(スタンドオフ)ジョージ・フォードが3本のDG(ドロップゴール)、6本のPG(ペナルティゴール)を決めて27-10と勝利した。
2015年のワールドカップで日本代表のFW(フォワード)コーチを務めたイングランド代表のスティーヴ・ボーズウィックHC(ヘッドコーチ)は、アルゼンチン代表戦からFW3名の変更にとどめた。
「自分や家族を暖かく迎えてくれた素晴らしい日本が好き」と語ったボースウィックHCは、「日本はこの8年間、ジャパンウェイを構築してプレーをしてきたと思う。ボールスピードが速く、ボールを動かす。さらにかなりスキルの高い選手がいる」。
「マイケル・リーチはとてつもない選手だ。2015年のワールドカップの時に彼と一緒に仕事をする機会に恵まれた。彼は本当に知的な選手で、彼は私が心から尊敬する人物。だからといって、日曜の夜に彼を上回るパフォーマンスを見せたいという気持ちに変わりはない」と警戒を怠らない。
左右のPR(プロップ)は、アルゼンチン代表戦から変更した。1番の副将のエリス・ゲンジが控えに回り、ジョー・マーラー、3番はベテランのダン・コールに代えてカイル・シンクラーが入り、HO(フッカー)ジェイミー・ジョージとコンビを組む。
LO(ロック)はマロ・イトジェとオリー・チェッサムのコンビ、FL(フランカー)はゲームキャプテンを務めるコートニー・ロウズと、前試合でNO8(ナンバーエイト)に入っていたベン・アールが7番にシフトし、ルイス・ルドラムが8番を務める。
BK(バックス)に変更はない。SH(スクラムハーフ)アレックス・ミッチェルとアルゼンチン代表戦のPOM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)のSOフォードがハーフ団を組む。CTB(センター)は12番にマヌ・トゥイランギとジョー・マーチャント。バックスリーはWTB(ウイング)がエリオット・デーリーとジョニー・メイ、FB(フルバック)は22歳のフレディー・スチュワードが引き続き先発する。
リザーブには、NO8ビリー・ブニポラが出場停止明けでメンバー入りし、HOセオ・ダン、PRゲンジ、ウィル・スチュアート、LOジョージ・マーティン、SHベン・ヤングズ、SO/FBマーカス・スミス、CTBオリー・ローレンスが入った。
FLローズ ゲームキャプテンは「我々は日本代表を心から尊敬している。彼らは試合に勝つために全力を尽くしてくれる。自分たちも準備は万全だ」と意気込んだ。
初勝利をもぎ取れるか
連勝を狙う日本代表のジェイミー・ジョセフHCは初戦からFW3名、BK1名を変更、そしてポジション変更が1名あった。「今、自分で言えるベストなFWパックだと思う。イングランドはFWでプレッシャーをかけてくると思うが、そこでしっかりした戦いができる」とジョセフHCが胸を張ったように、FWは経験豊富な選手と若き力が先発する。
フロントローは、PR稲垣啓太と具智元は変わらず、HOは坂手淳史がリザーブに、4大会出場のベテラン堀江翔太が先発に上がった。左LOにはサウマキ アマナキからチリ代表戦でNO8を務めていたジャック・コーネルセンが4番に上がり、前試合2トライを挙げてPOM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)に輝いたアマト・ファカタヴァとコンビを組む。
バックローは、左FLにリーチ マイケルが引き続き先発し、右FLに下川甲嗣に代わって出場停止が明けたピーター・ラブスカフニが入った。そして初戦を欠場したキャプテンNO8姫野和樹が先発する。
BKはSH流大、SO松田力也のハーフ団は引き続きスタートでプレーする。CTB中村亮土とコンビを組むのはリーグワン新人賞の長田智希で、ディラン・ライリーはベンチに下がった。バックスリーの布陣に変更はなく、WTBはジョネ・ナイカブラ、松島幸太朗、FBはセミシ・マシレワが務める。
ベンチには、HO坂手、PRクレイグ・ミラー、ヴァルアサエリ愛、LOワーナー・ディアンズ、FL下川、SH齋藤直人、CTBライリー、WTBレメキ ロマノ ラヴァが控えており、後半からインパクトを与えそうだ。
ジョセフHCは「イングランドはゲームコントロールが上手く、キッキングゲームも使ってくるし、セットプレーも強い。スクラムでプレッシャーをかけてくる。バランスが重要なので、バランスをとりながら、プレッシャーを受けるところでもプレッシャーをかけることが大事」とコメント。
姫野主将は「1試合スキップしたのでフレッシュだし、コンディション的にはいい。イングランド戦は、キャプテンとしてパフォーマンスを出すことが重要で、パフォーマンスでリーダーシップを発揮したい。自分たちの準備を100%やってきたし、あとは本当にやるだけ。『ブレイブ』という言葉を使ってチームを引っ張ってきた。勇気を持って、自分たちのプレーをし続けるマインドセットが大事」と語気を強めた。
昨秋の対戦では13-52で大敗した。スクラム、ラインアウトのセットプレー、接点、キッキングゲームでプレッシャーを受けた日本代表は、ワールドカップ本番でしっかりと対抗し、勝つ流れに持っていきたい。
過去の対戦成績は、日本代表の0勝10敗と勝ったことはない。ワールドカップでは1987年の第1回大会以来の対戦(●7-60)となる。ただ、日本代表は2015年のワールドカップからプール戦では8勝1敗と大きく勝ち越しているのも事実。
『ブレイブブロッサムズ』がニースの地で再び歴史を刻み、決勝トーナメント進出に大きく弾みをつけることができるか。
高かった母国の壁
開始早々の前半4分、イングランドが先制した。日本の自陣ゴール前でのオフサイドの反則から得たチャンスでペナルティーゴールを選択。ジョージ・フォードが確実に決めた。
嫌な流れになりかけた日本だったが、14分、同点に追いつく。8回にわたる連続攻撃でイングランドのゴール間際まで攻め込み、トライは奪えなかったものの、イングランドの反則を招く。ペナルティーゴールを選び、松田力也が正確に蹴り込んだ。
日本はさらに23分にも、キックで相手ゴール付近まで迫った。イングランドがオフサイドの反則を犯すと、松田が再びペナルティーゴールに成功。6-3でリードを奪った。
しかし、イングランドは直後の25分、今大会初となるトライを奪い逆転した。日本のラインアウトのミスから、ボールはイングランドのルイス・ラドラムに。そのままゴールラインを越えて持ち込んだ。コンヴァージョンキックもフォードが決めた。
この後、両チームはペナルティーゴールを1本ずつ決め、イングランドが13-9とリードして前半を終えた。
後半15分、日本は松田がペナルティーゴールを成功させ、1点差に迫った。
しかしイングランドは直後、日本を突き放しにかかる。素早いパス回しで日本の守備を切り裂き、最後はコートニー・ローズがボールを日本ゴールへと持ち込んだ。ノックオンがあったようにも見えたため、選手たちは一瞬動きを止めたが、テレヴィジョン・マッチ・オフィシャル(TMO)の結果、トライが認められた。コンヴァージョンキックをフォードが決めた。
イングランドはさらに後半26分、トライを重ねた。フォードが左サイドに絶妙なキックパスを出すと、フレディー・スチュワードがこれをキャッチ。そのまま日本のゴールラインを越えた。フォードはコンヴァージョンキックも成功させた。
イングランドは終了間際にも、この試合四つ目のトライを奪った。ジョー・マーチャントがゴールポスト付近にボールを運び込んだ。コンヴァージョンキックもフォードがきっちりと決めた。
日本はこれで、W杯優勝経験があるイングランドと11戦して全敗となった(テストマッチ含む)。「歴史を変える」と強い気持ちで臨んだ試合だったが、勝利はつかめなかった。
イングランドにとっては大差の勝利となったが、BBCのマイク・ヘンソン記者はこの夜の試合を、強豪のフランス、アイルランド、南アフリカがまだイングランドより数段上のレベルにいることを示す「まとまりのない」勝利だったと評した。
主将の姫野和樹は試合後のインタビューで、「自分たちがプランニングしてきたものがすごく出せた部分もあったが、後半アンラッキーな部分でトライを取られたことから流れをつかめずに、得点を重ねられてしまったのは今後の反省点かなと思う」と、この日の試合を分析。
「前半しっかりゲームメークできていた部分はあった。それを後半にしっかりつなげていかないと、こういったタイトなゲームで自力の差が出てしまう。そこをしっかり改善していきたい」と話した。
ジェイミー・ジョセフ監督は、「たくさんのチャンスがあったがミスを犯してしまい、プレッシャーがかかってしまった。最初の60分は非常によかったと思う。ただ、チャンスを生かすことができなかった」と振り返った。
日本は28日夜(日本時間29日早朝)に、現在D組2位のサモアと3戦目に臨む。
一方、イングランドの主将のローズは、「日本に全面的な賛辞を送る。厳しい戦いを仕掛けてくることは分かっていた。ボールがベトベトしていたが、いいプレーができ、勝ち点5を取れたのは何よりだ」と話した。
スティーヴ・ボーズウィック監督は、「選手のためにも、サポーターのためにも本当にうれしい。(中略)今夜はタフ(な試合)だったが、ボーナスポイントを獲得でき、うれしく思っている」と述べた。
イングランドはこの日の試合で、4トライ以上で与えられるボーナスポイントも得て、勝ち点を9に伸ばし、決勝トーナメント進出に近づいた。次は23日に現在D組5位のチリと対戦する。