2023年9月22日金曜日
ラグビーワールドカップ2023フランス大会予選プールD組
Saint-Etienne Stade Geoffroy-Guichard 収容客数41,965人(テレビ観戦)
19 - 10 Argentina勝利
立て直せるか
9月9日にマルセイユでイングランド代表と初戦を戦ったアルゼンチン代表。イングランド代表FL(フランカー)トム・カリーの退場で、前半早々から数的優位に立ったものの、10-27で星を落としてしまった。
アルゼンチン代表を率いるマイケル・チェイカHC(ヘッドコーチ)は、イングランド代用戦からFW(フォワード)2名、BK(バックス)1名の先発を変更した。
FWはキャプテンHO(フッカー)フリアン・モントーヤ、PR(プロップ)トマス・ガージョが先発し、フランシスコ・ゴメス=コデラがベンチに回り、エドゥアルド・ベージョが3番に入った。LO(ロック)は、マティアス・アレマノが4番から5番に移動し、ケガのトマス・ラバニーニがメンバーから外れ、ベテランのギド・ペティとコンビを組む。
バックローは変わらず、三重ホンダヒートでプレーするFL(フランカー)パブロ・マテーラ、マルコス・クレメル、NO8(ナンバーエイト)ファン=マルティン・ゴンサレスの3人で構成。なお、マテーラは現在96キャップ中、91試合で先発と、アルゼンチン史上最多となる先発出場記録を更新中だ。
BKは、SH(スクラムハーフ)ゴンサロ・ベルトラノウ、SO(スタンドオフ)サンティアゴ・カレーラスのハーフ団が引き続きハーフ団を組む。CTB(センター)は、12番にサンティアゴ・チョコバレス、13番はルシオ・シンティがリザーブに下がりベテランのマティアス・モローニが入った。WTB(ウイング)が、マテオ・カレーラス、エミリアーノ・ボフェリ、FB(フルバック)はファン=クルス・マリアが務める。
ベンチには経験豊富な選手が並び、100キャップを越えるベテランHOアガスティン・クレービー、PRマイコ・ビバス、フランシスコ・ゴメス=コデーラ、LOペドロ・ルビオーロ、イングランド戦でトライを挙げたFLロドリゴ・ブルーニ、SHトマス・クベリ、2015年大会得点王のSOニコラス・サンチェス、CTBシンティが控える。
チェイカHCは「サモア代表はかなり良くなっている。コーチ陣もいいし、とても団結している。SOクリスティアン・リアリーファノや、PRマイケル・アラアラトアは以前から知っているが、彼らはいい選手だ。他のワールドカップの試合同様、大きな挑戦だ。多くのファンや家族、見ている人たちに、自分たちの力を見せたい」。
続けて「イングランド戦の後、チームは重要な教訓を得た。より集中し、より明確にし、自分たちが何をすべきか、先週のようなビルドアップをせずに、より心を落ち着かせることだ。とても重要な試合だ」と力を込めた。
キャプテンのHOモントーヤも「サモア代表は選手層は厚く、イングランドやフランスの主要リーグでプレーする有名選手が多い。非常にフィジカルな試合になる。プレッシャーがあることは分かっている。私たちは情熱を持って、このジャージーと自分たちを象徴するものへの愛情を持ってやっている」。
「年長者はプレッシャーを吸収するためにそこにいる。若い選手たちにはプレーのことを考えてもらう。サモア代表戦で素晴らしい試合をする準備はできている」と語気を強めた。
強敵に挑む
一方、16日にチリ代表と対戦し、43-10と4トライ以上のボーナスポイントを取って勝利したサモア代表。セイララ・マプスアHCは、そのチリ戦代表からFW2名、BK1名を変更した。
FWは共同キャプテンのPRマイケル・アラアラトアがベンチに下り、ポール・アロエミールが先発し、PRジェームズ・レイ、HOセイララ・ラムとフロントローを構成する。LOは共同キャプテンのクリス・ヴイが5番に回り、セオドア・マクファーランドが6番に移動し、ブライアン・アライヌウエセが4番で先発。FLは6番にマクファーランド、7番にフリッツ・リーが入り、NO8は元オールブラックスのスティーヴン・ルアトゥアが務める。
BKは、SHジョナサン・タウマテイネ、オーストラリア代表として前回大会に出場したSOクリスチャン・リアリーファノのハーフ団、CTBトゥムア・マヌ、UJ・セウテニのセンターコンビは引き続き先発する
WTBはトップリーグ4チームでプレーしたナイジェル・アーウォンが14番にシフトし、11番にはベン・ラムが入り、今年のテストマッチ全てに先発し、3試合連続でトライをとっているFBダンカン・パイアアウアとバックスリーを形成する。
リザーブには、HOサマ・マロロ、オールブラックス50キャップを持つPRチャーリー・ファウムイナ、PRアラアラトア、LOタレニ・セウ、FLジョーダン・タウファ、SHメラニ・マタヴァオ、CTBディアンジェロ・レウイラ、WTBダニー・トアラが入った。
「ショートウィークでメンバーを決めるのに苦労した」というマプスアHCは、「自分たちがやりたいことをやり、自分たちがやりたいプレーに徹することで、アルゼンチン代表のやることを止めなければならない。自分たちのやりたいプレーを貫き、サモア代表流のプレーをすれば、アルゼンチンを止められると確信している」。
「イングランド代表が、どのようにプレーしたかったかを見るのは本当に興味深かった。我々は常に他のチームから学んでいる。その学びをどう生かし、自分たちのやりたいプレーをするかだ」と自信をのぞかせた。
また、キャプテンのFLブイは「これからの挑戦にワクワクしている。今週はとにかくシンプルに、選手たちが自分自身を表現できるようにリードするつもりだ」と話した。
そして、前回大会はオーストラリア代表としてプレーしたSOリアリーファノは、「マイケル・チェイカという元HCがいるだけでなく、このチーム、このグループにとって、歴史的にワールドカップでティア1の国と対戦するというチャレンジが待ち受けている」と腕を撫した。
ともにフィジカル、接点に長けたチーム同士の対決。激しい試合になることは間違いないが、BKの展開力、キッキングゲームではアルゼンチン代表が有利か。ただ、過去の対戦成績はサモア代表が3勝1敗とリードしている。また、日本代表が9月28日にサモア代表、10月8日にアルゼンチン代表と対戦する点でも興味深い一戦となろう。
Argentinaが実力を示す
イングランド代表との初戦を10-27で落としたアルゼンチン代表は何としても勝利したい試合だった。キャプテンHO(フッカー)フリアン・モントージャ、三重ホンダヒートでプレーするFL(フランカー)パブロ・マテーラ、SO(スタンドオフ)サンティアゴ・カレーラス、CTB(センター)マティアス・モローニ、WTB(ウイング)には、マテオ・カレーラス、エミリアーノ・ボフェリらが先発した。
ベンチにはベテランSH(スクラムハーフ)トマス・クベリ、2015年大会の得点王であるベテランSOニコラス・サンチェスが名を連ねた。
初戦はチリ代表と対戦し、43-10と快勝したサモア代表。LO(ロック)に共同キャプテンのクリス・ヴイ、NO8(ナンバーエイト)には元オールブラックスのスティーヴン・ルアトゥア、BK(バックス)はSHジョナサン・タウマテイネ、オーストラリア代表として前回大会に出場したSOナイジェル・アーウォン、ベン・ラム、FB(フルバック)ダンカン・パイアアウアらがスターター。
オールブラックス50キャップを持つPR(プロップ)チャーリー・ファウムイナ、共同キャプテンのアラン・アラアラトアがベンチに入った。
雨の中で行われた試合は、いきなり動く。前半1分、サモア代表FBパイアアウアがキックを競り合う中で反則しシンビン(10分間の途中退場)となる。数的有利となったアルゼンチン代表は9分、ラインアウトからボールを継続して、最後はWTBボフェリが右中間にトライ、自身でゴールを決めて7点を先制した。
その後は雨足も強くなり、相手の激しいディフェンス、接点の前にボールを動かすことがなかなかできない状況が続く。15分にサモア代表SOリアリーファノがPG(ペナルティゴール)を外すと、25分にはアルゼンチン代表はWTBボフェリがPGを沈めて10-0とリードを広げる。
28分、ようやくサモア代表がPGを返すが、34分にアルゼンチン代表がPGを決めて再び13-3とリードを10点差とする。38分、サモア代表は再びPGのチャンスを得るが、これを決めることができず、さらにハイパントキック後のカウンターラックから好機を得たものの、ここも得点に結びつかない。結局、前半は13-3のまま、アルゼンチンリードで折り返した。
後半、雨は止んだもののボールが手につかないスリッピーな展開は続く。アルゼンチン代表は相手陣奥でモールを形成するものの、なかなか得点を挙げることができない。9分、WTBボフェリがインゴールに飛び込んだが、ダブルモーションを取られてトライにはならなかった。
14分、アルゼンチン代表はPGを加えて、16-3とスコアボードを動かすことに成功したが、17分のPGは決めることはできず、16-3のまま試合は後半に突入した。
ディフェンスの時間が長かったサモア代表だが、ベンチメンバーを投入した後の35分、やっと敵陣奥でチャンスを得た。相手の反則からFW(フォワード)が攻め込み、最後は途中出場のCTB(センター)ディアンジェロ・レウイラが中央左にねじ込んでトライ。ゴールも決まって、6点差に追い上げる。
サモア代表が1トライ1ゴールで逆転できるという緊張感の中、40分、サモア代表はハーフウェイラインでペナルティを犯すと、アルゼンチン代表は途中出場のSOサンチェスが落ち着いて、50mのPGを成功させて19-10。アルゼンチン代表がリードしたままノーサイドを迎えた。
POM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)には、この試合でアルゼンチン唯一のトライを決めたWTBボフェリが選出された。試合後のインタビューで「サモア代表との試合は、簡単なチームでないことはわかっていたので、とても重要な勝利だったし、これで安心して家に帰れる。とてもタフな試合で、ひとつひとつのポイントが重要だった。チームには満足している」と口にした。
今大会、初勝利を挙げたアルゼンチン代表のマイケル・チェイカHC(ヘッドコーチ)は「ハッピーだよ。プレッシャーに関しては、いいことがたくさんあった。スコアに差をつけたい場面もあったが、ディフェンスの基礎はできていたし、モールは前の試合よりずっと良かった」。
「次の試合に向けて積み上げていきたい。トーナメントを勝ち進むには、もっとテリトリーを支配しないといけない」と反省しつつ、今大会初勝利を挙げて笑みを浮かべた。
キャプテンのHOモントージャは「勝利に満足している。チームにとってチャレンジングな1週間だったが、それを乗り切ることができた。たくさん声援を送ってくれた観客と、変わらず応援してくれたテレビの前のファンに感謝したい」と語った。
惜しくも敗れたサモア代表のセイララ・マプスアHCは「ボールポゼッションが40%では、テストマッチに勝つのは難しい。とはいえ、いくつかチャンスを作れたのは良かった。そのうちのいくつかを決め切ることができれば、まったく違った試合になる。このレベルでは、チャンスをつかんだら、ものにしなければならない。6日後にはまた大きな試合(=日本代表戦)が控えているからね」と前を向いた。
共同キャプテンのLOヴイも、「今日の選手たちを非常に誇りに思う。素晴らしい試合だった。(前半終了間際のチャンスをつかめなかったことについて)あれで試合の流れが変わったかもしれない。あのチャンスは大きかった。こういう試合では、チャンスは1回か2回しかない。来週(の日本代表戦は)はこの反省を生かし、より良い試合にしたい」と話した。
ともに次の試合が予選プール3試合目となる。1勝1敗のアルゼンチン代表は9月30日にナントで同じ南米のチリ代表と、同じく1勝1敗のサモア代表は、中5日で9月28日に日本代表とトゥールーズで相対する。