2023年10月1日日曜日

ラグビーワールドカップ2023フランス大会予選プールC組

Saint-Etienne Stade Geoffroy-Guichard 収容客数41,965人(テレビ観戦)

34 - 14 Australia勝利

Wallabies

崖っぷちのWallabies

強豪国が着実に勝ち点をあげて決勝トーナメント進出へ前進するなかで、過去2度の優勝を誇るオーストラリアは苦境に立たされている。プールCで1、2位を争うと見られていた、オーストラリア対ウェールズは、40-6という予想外の大差でウェールズが勝利。早々に決勝トーナメント進出を決めた。一方、屈辱の完敗を喫したオーストラリアのエディー・ジョーンズヘッドコーチは、多くのファンを失望させたことを謝罪した。

プールCはウェールズが3連勝の勝ち点14で首位に立ち、1勝1敗で勝ち点6のフィジー、1勝2敗で勝ち点6のオーストラリアが追う展開。オーストラリアは10月2日(日本時間0時45分キックオフ)に行われるポルトガル戦に勝てば4点、ボーナス点(4トライで1点)を獲得すれば5点を追加できるが、フィジーは、ジョージア、ポルトガルという下位2チームとの対戦を残し、2連勝が確実視されている。つまり、最低でも8点加える可能性が高く、オーストラリアの史上初のプール戦敗退は濃厚という状況だ。

それでもオーストラリアは戦い続けなければならない。4年後の自国開催のRWCに向けて、若手を多数起用して戦うチームにとって、一戦一戦が成長のための貴重な機会となる。ジョーンズヘッドコーチは、ウェールズ戦の翌日から再起に向けて練習を再開。「若い選手たちの、より良い選手になりたいと願望は素晴らしいものだった」と語る。ショッキングな黒星がチームを変えるのかもしれない。

オーストラリアの世界ランキングは現在10位。ポルトガルは同16位だが、ジョーンズヘッドコーチは、ウェールズ戦から先発で3名を変更するのみのベストメンバーを編成した。キャプテンのHOデイヴィッド・ポレクキを筆頭に、身長205cmのニック・フロスト、208cmのリッチー・アーノルドの両LO、攻守にアグレッシブに動き回るNO8ロブ・ヴァレティニは変わらず。ウェールズ戦で7番だったトム・フーパーが6番に動き、7番には交代出場で良い動きをしたフレーザー・マクラライトが入る。

ゲームをコントロールする、SHテイト・マクダーモット、SOベン・ドナルドソンもそのまま。両CTBのみ変更で、サム・ケレビジョーダン・ペタイアに代わって、スーパーラグビーのワラターズコンビ、ララカイ・フォケティ、強力なボールキャリーが光るアイザイア・ペレセを起用する。自信を取り戻す試合にしたい。

大健闘のPortugal

対するポルトガルは、9月23日、ジョージアと18-18と惜しくもRWC初勝利を逃したが、懸命のタックルとスピーディーな攻撃で観客を沸かせた。元フランス代表のパトリス・ラジスケヘッドコーチは、オーストラリア戦に向けて先発で4名の変更を発表。先週リザーブだったPRデイヴィジ・コスタが今大会初先発。同じくリザーブだったマルチン・ベーロが先発復帰。FW第三列にFLディヴィジ・ウォリス、NO8チボウ・ジ・フレイタスが入った。この2人も今大会初先発となる。

身長196cm、体重100kgのマルチンズは、今大会、一度も失敗なく31回のタックルを成功させている。また、ジョージア戦で2トライをあげたWTBハファエリ・ストルチは、1試合2トライ以上を獲得した初めてのポルトガル選手となっている。ポルトガルはウェールズのウォーレン・ガットランドヘッドコーチに「ミニ・フィジー」と言われるほど個人技を駆使して果敢に攻めるチームだ。大きな選手が揃うオーストラリアを運動量とスピードで翻弄したい。

Wallabiesが望みを繋ぐ

他力本願ながら決勝トーナメント進出に望みをつなぐため、4トライのボーナス点を獲っての勝利が必要だった。オーストラリアは1987年から始まったラグビーワールドカップ(RWC)の歴史の中で一度もプール戦敗退の経験がない。ここまで1勝2敗の結果は、過去2度優勝を誇る強豪国の選手達にとって受け入れ難いことだっただろう。プール戦最後の相手は、16年ぶり2度目のRWC出場となったポルトガル。2大会でいまだ勝ち星のないポルトガルから4トライ奪うのは容易いことだと思われたが、現在のチーム状況では簡単なことではなかった。

10月1日、午後5時45分(日本時間2日、0時45分)サンテティエンヌのスタッド・ジェフロワでオーストラリアにとっての大事な戦いが始まった。前半4分、SOベン・ドナルドソンが先制PGを決める。まずは3点を取る慎重なスタートがチーム置かれた現状を物語っていた。その後は、「ミニ・フィジー」とも称されるポルトガルがフィールドの横幅一杯にスペースを使ってディフェンスを崩しにかかる。何度も大幅ゲインを許すオーストラリア。12分には、ポルトガルCTBペドロ・ビッテンクールにトライを奪われる。CTBトマーズ・アプレトンがオーストラリアのディフェンダーの前で正確なロングパスを決めたものだ。スコアは、3-7と逆転。

魅惑のアタックで観客を魅了するポルトガルだが、16分に地域を挽回しようとしたタッチキックが痛恨のダイレクトタッチ。オーストラリアにチャンスのラインアウトが訪れる。ここからオーストラリアは22歳のPRアンガス・ベルが大きく前進し、NO8ロブ・ヴァレティニがさらに前進して最後はLOリッチー・アーノルドがトライ。前半19分で10-7と試合をひっくり返した。続く21分、ゴール前に迫ったラインアウトからモールを押し込み、キャプテンのHOディヴィッド・ポレクキがトライして、17-7。26分、気迫あふれる突進を何度も見せたアンガス・ベルが密集サイドに走り込んでトライを追加し、24-7と突き放した。ボーナス点獲得まで1トライだ。

ポルトガルも前半終了間際にWTBホドリゴ・マルタが自陣からタックラーをかわして抜け出し、FLニコラス・マルチンズが左コーナーに滑り込んだが、ここは、オーストラリアFBアンドリュー・ケラウェイが懸命のタックルでタッチに押し出した。後半のポルトガルの追い上げを考えれば大きなプレーだった。

後半もポルトガルはオーストラリアのディフェンスが薄いタッチライン際にボールを運んでチャンスを作ったがトライは獲りきれず。逆にオーストラリアは後半7分、SHテイト・マクダーモットの好判断からFLフレーザー・マクライトがトライし、ようやく4トライ目のボーナス点を獲得。その後はオーストラリアに2枚のイエローカードが出たこともあって、ポルトガルが猛反撃。窮地に陥ったオーストラリアだが、WTBマリカ・コロインベテの強力なタックルなどでしのぎ、34-14で逃げ切った。

試合中は声を荒げていたエディー・ジョーンズヘッドコーチは、試合後は笑顔になり、選手を称えた。「13人になってしまいましたが、若いチームとしては多くの勇気を示してくれたと思います」。オーストラリアは、4試合を終えて2勝2敗の勝ち点11とし、ウェールズの勝ち点14についで2位に浮上。しかし、フィジーは1試合の残した勝ち点10をあげている。最終戦のポルトガルに勝利、引き分けでオーストラリアを上回り、ボーナス点1を獲って同点となった場合も直接対決で勝っているフィジーが上位。オーストラリアは、フィジーがボーナス点を獲らずに負けた場合のみ生き残ることができる。

フィジー対ポルトガルは10月8日(現地時間午後9時)に行われる。待つしかないジョーンズヘッドコーチは「こんな状況は初めてなのでどうしていいか分からない。とにかく、3日休んで3日練習し、試合結果を待ちます」と話した。敗れたポルトガルのアプレトン主将は、「選手たちを誇りに思うが、結果は残念」と複雑な表情をしていた。もう少しアタック面の精度が高ければ歴史的勝利もあり得る戦いだったし、勝算があって臨んだからこそだろう。オーストラリアを苦しめた実力からして、フィジー戦でRWC初勝利をあげる可能性はある。わずかな可能性を残したオーストラリアは、この日破ったポルトガルに運命を託すことになった。

投稿者

ラグビー好きの食いしん坊

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)