2023年10月7日土曜日
ラグビーワールドカップ2023フランス大会予選プールD組
Lille Stade Pierre-Mauroy 収容客数50,096人(テレビ観戦)
18 - 17 England勝利
ベスト8へ向けて
ラグビーワールドカップ2023も、今週末でプールステージ全ての試合が終わり、準々決勝へ駒を進める8チームが決定する。10月7日(土)はリールで、首位通過を決めているプールDのイングランド代表(世界ランキング6位)がサモア代表(世界ランク14位)の挑戦を受ける。
9月23日の第3戦でチリに70-0と大勝して、決勝トーナメント進出を決めたイングランドの代表。FL(フランカー)ジャック・ウィリスが負傷で大会を離脱したが、スティーブ・ボースウィックHC(ヘッドコーチ)は、キャプテンのCTB(センター)オーウェン・ファレル以外を全て変更し、そのファレルとWTB(ウイング)ジョニー・メイ以外の先発13人を初戦の対アルゼンチン代表と同じメンバーを起用した。
FW(フォワード)から見ると、第1列はPR(プロップ)に副将のエリス・ゲンジとベテランのダン・コール、HO(フッカー)ジェイミー・ジョージの3人。LO(ロック)はマロ・イトジェとオリー・チェサムのコンビ。バックローは、FL(フランカー)に副将のコートニー・ロウズと、アルゼンチン代表戦のレッドカードで出場停止となっていたトム・カリーが復帰、NO8(ナンバーエイト)はベン・アールが務める。
BK(バックス)はSH(スクラムハーフ)のアレックス・ミッチェルと、SO(スタンドオフ)ジョージ・フォードのハーフ団。主将ファレルは12番に入り、マヌ・トゥイランギが13番に入った。両翼はWTBメイとジョー・マーチャントが入り、FB(フルバック)には22歳のフレディー・スチュワードが務める。
リザーブにはHOセオ・ダン、PRジョー・マーラー、カイル・シンクラー、LOジョージ・マーティン、NO8ビリー・ヴニポラ、SHダニー・ケア、SO/FBマーカス・スミス、CTBオリー・ローレンスが控える。
ボースウィックHCは、「今週はビッグゲームだ。ジョージ・フォードとオーウェン・ファレルが10番と12番で一緒にプレーする、少し久しぶりの機会だ。このパートナーシップが成長するのを見るのが楽しみ」。
「チリ代表とのテストマッチの後半では、2人が一緒にプレーした時間もあったが、先発は少し久しぶりだ。(キックはどちらが蹴るのかの問いに)今週はオーウェンがやっていたけどね(笑)。ダン・コールはこの試合に先発するのに適した選手だと思うし、カイル(・シンクラー)は後半に出場してインパクトを残すのに適した選手だ」と話した。
名SOだったジョニー・ウィルキンソンが、22年間守り続けているイングランドの最多得点記録まであと2点に迫ったCTBファレルは、「(自分の記録は)考えていない。サモア代表との試合に集中している。ただ、ひとつだけ言えるのは、イングランド代表としてプレーする機会を得て、その記録に近づくことは名誉なことだということだ」。
フォードとのコンビについてスキッパーは「2人ともファーストレシーバーには慣れている。2人とも両方の仕事をこなせるし、その後のオーガナイズもできる。そういった例はどのチームにもたくさんある。サラセンズではアレックス・グードがそうだし、ニュージーランドではバレット(ジョーディとボーデン)、リッチー(モウンガ)がそうだ。いろいろな国で、いろいろな人が10番を背負っている」と話した。
イングランド代表としては武器であるセットプレーでプレッシャーをかけて主導権を握って、FW、BK一体となった攻撃で得点を重ねていきたいところ。
プライドを懸けて
一方、1勝2敗で、現在プール4位ながら、日本代表とアルゼンチン代表がともにボーナスポイントをとらずに引き分け、この試合で4トライ以上のボーナスポイントを得て大勝したときのみ、わずかながらべスト8入りの可能性を残しているサモア代表。セイララ・マプスアHCは、22-28と敗戦した日本代表戦から9人の先発を入れ替えた。
第1列は全て替え、PRジョーダン・レイと共同主将のマイケル・アラアラトア、HOサマ・マロロの3人が先発。LOはサム・スレイドとブライアン・アライヌウエセ。バックローは、FLはイングランドのサラセンズでプレーするセオ・マクファーランドと、先週ゲームキャプテンを務めたフリッツ・リー、NO8はブリストルでプレーする元ニュージーランド代表のスティーブン・ルアトゥアの3人が日本代表戦から引き続き先発する。
ハーフ団は、SHジョナサン・タウマテイネは引き続きスターターを務めるが、元オーストラリア代表のSOクリスチャン・リアリーファノはベンチに下がり、大会終了後、清水建設江東ブルーシャークスでプレーする元オールブラックスのリマ・ソポアンガとハーフ団を組む。
CTBはダニー・トアラと日本代表戦に引き続いて先発するトゥームア・マヌ、WTBネイア・フォマイと日本でもプレーしたナイジェル・アーウォン、FBダンカン・パイアアウアが入った。
ベンチにはHOセイララ・ラム、PRジェームズ・レイ、ポール・アロエミール、LOソータラ・ファアソオ、FLアラマンダ・モツガ、SHメラニ・マタヴァオ、SOリアリーファノ、WTBミラクル・ファイイランギが名を連ねた。
マプスアHCは「イングランド代表が質の高いチームであることはわかっているし、今は波に乗っている。だから先週からハードワークし、特にコンタクトエリア周辺では、自分たちのやりたいプレーができるようにしてきた」。
「私たちはほぼ100日間一緒にやってきたと思うが、選手の成長は、本当に喜ばしいことだ。ワールドカップで決勝トーナメントに行くチームと、敗退するチームを分けるのは、チャンスをものにできるかそうでないかだ。学ぶべき厳しいレッスンがあったのは確かだが、そのおかげで前進することができた」と意気込んだ。
PRアラアラトア主将は「(日本代表との)試合を振り返ってみると、ボールを持ったときにできることの一部は見せられたと思うが、もっと違う攻め方ができた部分もあった。それは恐らく、私たちが今週フォーカスして取り組んだ部分の1つだろう。80分間、自分たちのポテンシャルを発揮できれば、アルゼンチン代表や日本代表、そしてイングランド代表といったチームと戦えることは分かっている。大事なのはそれだけだ」と前を向いた。
サモア代表としては武器であるフィジカル、特にFWのコンタクトの部分で激しいファイトを見せてペースを握りたいところだ。なお、イングランド代表とサモア代表は、これまで3度のワールドカップを含め8度対戦し、いずれもイングランド代表が勝利している。サモア代表はイングランド代表から初勝利を伺う。
イングランド代表はきっちりと勝利して準々決勝に弾みをつけられるか。サモア代表は、現実的には勝利して予選プール3位以内に入り、次回大会の出場権を得たいところだろう。
日本代表と戦ったプールDの両者の最終戦は、10月7日(土)午後5:45(日本時間8日深夜0:46)にリールのスタッド・ピエール・モロワでキックオフされる。
Englandが薄氷の勝利
5週目に入ったラグビーワールドカップ2023は、プール戦も残すところ5試合となり、現地土曜にリールで行われたプールDの試合では、既に1位でベスト8進出を決めているイングランドと、わずかながら決勝トーナメント進出の可能性を残したサモアが対戦。
試合が動いたのは9分。ハーフウェイライン付近からアタックを開始したイングランドは、手数をかけずにパスを回し、オープンサイドへ展開すると、タッチライン際で相手のラインを突破。最後はLO(ロック)オーリー・チェサムがインゴールに持ち込みトライを決める。
一方、サモアは12分にPG(ペナルティゴール)での反撃を試みるも、ここはSO(スタンドオフ)リマ・ソポアンガが左へ外し、得点機を逸する。
この後、前節からスタメン14人を変更し、メンバーをアップグレードしたイングランドは、SOジョージ・フォードとの揃い踏みとなったことで、この試合はCTBでの出場となったキャプテンのオーウェン・ファレルが、18分にPGを決め、それまでレジェンドのジョニー・ウィルキンソが保持していたイングランド代表歴代最多得点を更新する。
対するサモアは自陣でのインターセプト皮切りにアタックを開始すると、軽快なパスワークで敵陣へ攻め込む流れから、22分にWTB(ウィング)ナイジェル・アーウォンがトライを決めて応戦。コンバージョンも決まり、一気に1点差に詰め寄る。
このトライを契機にリズムが出始めたサモアは、敵陣でキックパスやオフロードパスをつなぐ躍動感溢れるアタックを見せると、29分にはPGではなくトライを狙ったラインアウトから、オープンサイドへのキックパスがインゴールへ走り込んだアーウォンにつながりトライ。
SOソポアンガのキックも決まり、サモアが14-8と逆転に成功する。攻勢を強めるサモアはその後も前半終盤まで敵陣での攻撃を継続し、繰り返し敵陣インゴールへ迫るも、試合はこの時間帯の劣勢を何とか守り切ったイングランドが、6点のビハインドを保ったまま後半へ。
後半最初にスコアの欲しかったイングランドは、キックオフから積極的にアタックを仕掛けるも、サモアは自陣でのターンオーバーを皮切りにテリトリーを回復すると、8分にソポアンガがPGを決め、17-8とリードを広げる。
攻撃がちぐはぐなイングランドは、40分近く得点が奪えない状況が続くも、18分にSOファレルがPGを決め、ようやくスコアを動かすことに成功する。イングランドは25分にも着実にPGでの加点を試みるが、ここはファレルがショットクロックのバイオレーションを犯し、得点機を逃す。
これで嫌な流れになりかけたイングランドだったが、26分にサモアにイエローカードが提示され数的優位に立つと、33分に敵陣深い位置でのマイボールスクラムから、途中出場のSH(スクラムハーフ)ダニー・ケアがインゴール中央付近へ飛び込みトライを奪う。このコンバージョンはファレルが難なく決め、イングランドが土壇場で18-17と逆転する。
その後、サモアは最後までイングランドを追い詰めるも、試合はそのまま終了の笛を迎える。最終戦で苦しみながらもプール戦を全勝としたイングランドは、プールD首位通過を決め、惜敗したサモアはプール4位が確定した。