2023年9月9日土曜日
ラグビーワールドカップ2023フランス大会予選プールD組
Marseille Stade de Marseille 収容客数67,394人(テレビ観戦)
27 - 10 England勝利
タレント豊富な優勝候補
ラグビー発祥国のイングランドは強力なフォワードの戦術と堅牢な守備を特徴とし、攻撃的なランニングとスクラムで優位に立ち、相手を制圧する力強いプレースタイル。
ワールドカップ(W杯)全大会に出場し、2003年オーストラリア大会ではホストチームとの決勝を制し、ウェブエリスカップを北半球で唯一掲げている。この他に1991、2007、2019年と3度の決勝進出を果たしている。
W杯開幕前のワールドラグビーランキングは8位(9/4付)。今大会も注目選手は目白押しだが、SO、CTBでプレーし、精度の高いキック力に加え優れたリーダーシップを発揮するキャプテンのオーウェン・ファレル、高い身体能力を誇りロック、フランカーを務めるマロ・イトジェ、若き司令塔SOマーカス・スミスなどが特筆される。彼らは豊富な経験と優れたスキルを持ち合わせており、イングランド代表を牽引する存在。
昨年12月にエディー・ジョーンズ現オーストラリア監督の後任として、スティーブ・ボースウィック監督が就任したイングランド代表。フランス大会にはFW19人、BK14人の構成で、最終スコッド33人の合計キャップ数は1400を超える陣容で臨む。日本代表にとってW杯2大会連続8強進出への大きな壁となる相手。
こちらも優勝候補の一角
アルゼンチン代表、愛称は「ロス・プーマス(Los Pumas)」。伝統的にフォワードが強く、グラウンドを広く使って展開するプレースタイル。
ワールドカップ(W杯)開幕前のワールドラグビーランキングは6位(9/4付)だが、アルゼンチン代表がマッチメイクする相手がニュージーランド、南アフリカ、オーストラリアといった南半球の強豪が多く、ポイントを重ねることが難しいことから、実力はヨーロッパのスコットランド以上だとする声もある。過去のW杯でも2007年大会で3位。2015年大会で4位。ベスト8も2度(1999年、2011年)経験している。
現在の代表スコッドはヨーロッパのリーグで活躍する選手がほとんどで、注目選手はSOのニコラス・サンチェス。正確なキックとクリエイティブなプレーで攻撃陣を牽引する。また日本のリーグワンで活躍するフランカー、パブロ・マテーラ(三重HH)も、フィジカルなプレースタイルでチームの中核を担っている。日本代表とは予選プールD組の最終戦で対戦。激しいプレーを持ち味としながらも、ペナルティーを減らしてきたアルゼンチンは厳しい相手となる。
波乱の幕開け
日本と同じ1次リーグD組注目の一戦は、前回大会準優勝のイングランドが27―10でアルゼンチンを下し、勝ち点4を獲得した。試合開始直後に危険なタックルによる退場で1人欠く数的不利の中、下馬評を覆す大きな白星を手に入れた。 試合はいきなり動いた。開始2分過ぎ、フランカーのカリーがハイボールをキャッチして着地しようとした相手の頭部に接触し、イエローカードで10分間の一時的退出に。このプレーには今大会から新たに導入された、8分間にレッドカードかイエローカードで据え置きかを審議する「バンカーシステム」が適用されると、レッドカードに格上げされて一発退場に。イングランドは試合の大半を14人で戦う数的不利で絶体絶命のピンチに陥った。 だが03年大会で北半球勢唯一の優勝を果たしているラグビーの母国は、ここからがしたたかだった。直後の3点を先取されたものの、相手もシンビンで1人少なくなった直後の前半10分、SOフォードのPGですぐさま同点に。さらに同27分、フォードのドロップゴール(DG)で勝ち越しに成功すると、4分後にはフォードが今度は約50メートルのDGに成功。数的不利を逆手に取り、キックで3点を積み上げる作戦が奏功し、12―3とリードして前半を終えた。
後半もフォードの右足はさえまくり、相手のペナルティーを誘ってはショットを選択し、さらに5PGで15点を追加。終盤に1トライを返されたものの、セーフティーリードを保ったまま、会心の勝利を挙げた。
大会直前にはフィジーに史上初めて敗れるなど、絶不調のまま開幕を迎えたイングランド。8月のテストマッチでSOファレル主将、No・8ブニポラがレッドカードによる出場停止処分を受け、ファレルの代わりに10番を任されたのがフォードだった。
かつては重圧への弱さを露呈していたフォードだが、この日は全27得点を右足一本で稼ぐ八面六臂(ろっぴ)の働きで、文句なしのプレーヤー・オブ・ザ・マッチ(POM)にも選出。「(DGは)いつもプランとして持っていること。われわれにとって大きな武器。タフなゲームが続くが、成長を続けたい」と力強く言い切った。
イングランドの次戦は17日(日本時間18日)の日本戦。ファレルとともにカリーも出場停止処分で欠く見通しだが、チーム全体で失っていた自信を大きく取り戻し、大きな壁として立ちはだかることになりそうだ。