2023年9月10日日曜日
ラグビーワールドカップ2023フランス大会予選プールC組
Bordeaux Stade de Bordeaux 収容客数42,115人(テレビ観戦)
32 - 26 Wales勝利
復活なるか
ウェールズ代表、愛称は「レッドドラゴンズ(Red Dragons)」。世界でも最もラグビーの人気が高く文化として根付いているのがウェールズ。1970年代の全盛期は世界一と称され、常にヨーロッパの強豪の一角を占めてきた。
伝統的に名キャプテンとプレースキックの名手が揃い、無骨なフォワードとランニングスタイルからボールを回す戦い方が象徴的。
ワールドカップ(W杯)開幕前のワールドラグビーランキングは10位(9/4付)に位置。レッドドラゴンズにとってのW杯は初回参加の1987年大会の3位が最高成績で、2011、2019年大会でも準決勝進出を果たしながら、決勝の舞台へは未だ立てていない。
ケガで招集を見送られたケン・オーウェンズからキャプテンを託されたのが、フォワードのデウィ・レークとジャック・モーガン。ともに初のW杯だが共同キャプテンとしてチームを牽引する。それをサポートするのが経験豊富なセンターのジョージ・ノース(4回目のW杯出場)や、ウィングのジョシュ・アダムズ(前回大会7試合7トライ)、攻撃を司るキックの名手、SOのダン・ビガーや力強さが持ち味のNO8タウルペ・ファレタウなどスター揃い。復帰した名将ガットランドの手腕に期待がかかる。
同じヨーロッパ勢のアイルランド、イングランドとの実力も拮抗しており、決勝カードに上り詰める候補のひとつ。
観客を魅了するフィジィアン・マジック
フィジー代表、愛称は「フライング・フィジアンズ(Flying Fijians)」。変幻自在のパスワークとランニングでまさに「空を飛ぶよう」なプレーを見せる。
俊敏性とスキルを生かしたオフロードプレーと華麗なランニングが伝統のスタイル。
ワールドカップ(W杯)開幕前のワールドラグビーランキングは7位(9/4付)に位置し、1995年大会での予選敗退以外、W杯本大会すべてに出場している。最高成績は2回のベスト8。
注目選手はセンターのセミ・ランドランドラ。フィジー代表のスーパースターであり、そのパワフルなランニングやオフロードプレーは相手にとって脅威。2021年東京五輪7人制フィジー代表でも活躍し、金メダルの立役者となった。
他にもヨーロッパで活躍するレキマ・タンギタンギバルなど注目選手は多数。フライング・フィジアンズの華麗な進撃に期待したい。
番狂わせなるか
オーストラリア代表などの強豪もいるプールCで、準々決勝進出への上位2枠を争うウェールズ代表とフィジー代表がラグビーワールドカップ2023の初戦で激突し(9月10日・ボルドー)、32-26でウェールズが大事な試合を制した。
フィジーは18点ビハインドから終盤に2トライを奪い返し、逆転を目指して試合終了間際にもゴールに迫ったが、あと一歩及ばなかった。
「厳しい結果となった。我々は多大な努力を費やし、選手たちは最後まで一生懸命頑張っただけに、本当に残念だ」(フィジー代表:ワイセア・ナヤザレヴ主将)
序盤にSOダン・ビガーのワールドカップ通算100得点となるペナルティゴール(PG)で先制したウェールズ。7分にはCTBジョージ・ノースのブレイクで敵陣深くに入り、たたみかけ、WTBジョシュ・アダムズがフィニッシャーとなった。
一方、8点ビハインドとなったフィジーは13分、キャプテンのCTBワイセア・ナヤザレヴが力強い走りでダブルタックルを破り、ゴールへ持ち込んで反撃の狼煙を上げると、17分にはスクラムからの展開でナヤザレヴが切り込み、オフロードパスをもらったCTBセミ・ランドランドラが抜けてビッグゲインし、サポートについていたFLレキマ・タンギタンギヴァルにつないで逆転トライとなった。
しかし、ウェールズはPGで点差を詰め、29分にはゴール前で攻撃を繰り返し、ショートパスをもらったCTBノースが中央を抜けてゲームをひっくり返した。
34分のフィジーの攻撃に耐え、18-14で折り返すと、48分(後半8分)にはスクラムからの展開でCTBニック・トンプキンズが抜けてボールをつなぎ、チャンスを広げ、フィジーも懸命に守ったが、ウェールズキャプテンのFLジャック・モーガンがキックパスを放ってWTBルイス・リースザミットのトライにつながった。
2007年大会以来のトップ8入りを目指すフィジーも果敢に攻め続けたが、ゴールに迫りながらもウェールズの粘り強いディフェンスに何度も得点を阻まれた。64分にイエローカードをもらって1人少なくなると、直後、ウェールズがラインアウトからモールでトライを獲りきり、32-14と点差が広がった。
それでもフィジーはあきらめず、73分に7点を奪い返すと、78分にもゴール前のFWのパワープレーでトライを挙げ、6点差に詰めた。
そして試合終了間際、逆転勝利を狙うフィジーはチーム一体となって13フェイズ重ねてゴールに迫り、CTBチョスア・トゥイソヴァがスペースのあった左外へ長いパスを放ったが、バウンドした楕円球をランドランドラが落としてしまい、直後、激闘終了の笛が鳴った。
プールC突破へ向けての重要な試合を制したウェールズ代表だが、ウォーレン・ガットランド ヘッドコーチは厳しかった。
「勝利には満足しているが、我々は自分たちで苦しくしてしまい、最後の15分間で愚かな決断を下してしまった。規律の部分など、徹底的な見直しをおこなう必要がある。いくつかのことで少し怒っているが、ポジティブなのは我々が勝ったということだ」
ウェールズ代表は次の土曜日にポルトガル代表と対戦。フィジー代表は17日、絶対に負けられない戦いとしてオーストラリア代表に挑む。
フィジー代表の経験豊富なFLレヴァニ・ボティアは、敗北で厳しい状況になったことについて問われると、「何でも起きる可能性はあるが、今は振り返ることはできない。前を向いて自分たちに何が足りないのかを確認する必要がある。我々はもっと良いプレーができると思う」とコメントした。