2023年9月16日土曜日
ラグビーワールドカップ2023フランス大会予選プールC組
Nice Stade de Nice 収容客数35,983人(テレビ観戦)
28 - 8 Wales勝利
Wales連勝なるか
Warren Gatland(ヘッドコーチ)が、6点差での勝利から13人の先発選手を入れ替えた。先発として残るのは、Taulupe FalatauとLouis Rees-Zammittだけとなる。
Dewi Lakeがキャプテンに任命されたのは彼のキャリアで2回目となる。前回はトゥイッケナムで行われたラグビーワールドカップ2023の事前試合において対イングランド戦でウェールズを率いた。今回、彼のキャリアで3回目の先発出場となり、9キャップ中7試合はベンチからの途中出場。
Leigh Halfpennyは、2011年、2019年に続き、3回目のラグビーワールドカップ出場となる。2020年から数えたウェールズの43国際試合のうち、15回の出場を果たしており、2023年における3試合での出場時間は165分間にとどまる。
Gareth AnscombeとTomos Williamsがスクラムハーフとフライハーフとして並んで出場するのは、2022年11月26日のオーストラリア戦以来であり、通算でも5回目となる。
Tomos Williamsは、2018年の南アフリカ戦でデビューを飾って以来、今試合で50キャップ目。この記録を達成したウェールズで7人目のスクラムハーフとなる。
エクセター・チーフスにおけるチームメイトであるChrist TshiunzaとDafydd Jenkinsがウェールズの2列目に並んで先発するのは初めて。Tshiunzaは初めてウェールズの2列目で先発となる。
W杯初勝利なるか
2007年大会以来、16年ぶり2度目のワールドカップ(W杯)本大会への扉を開いたポルトガル代表。愛称の「オス・ロボス(Os Lobos)」はポルトガル語で狼の意味。
2022年ドバイでラスト1枚の切符をかけ、アメリカ、香港、ケニアとの敗者復活戦を総当りの末に制して、プールCに滑り込んだ。
全勝同士のポルトガルとアメリカの戦いは、得失点差でポルトガルが引き分ければ1位確定。しかし後半20分に逆転を許し、ポルトガルは窮地に立つ。しかし試合終了間際の粘りでアメリカのペナルティーを引き出すと、ラストプレーにショットを選択。SHのサムエル・マルケスが決めて同点となりホイッスル。ポルトガルの2度目のW杯出場が決まった。
W杯開幕前のワールドラグビーランキングは16位(9/4付)。初出場した2007年大会では、4戦4敗、得点38、失点209でプール戦で姿を消した。現在の代表チームにW杯経験者はいないが、SOのジェロニモ・ポルテラの父親ミゲルは16年前のメンバーのひとり。主力選手はフランスのクラブに多く所属し、WTBのラファエレ・ストルティなど攻撃力のある選手がバックラインに揃う。持ち前の勇敢なディフェンスと力強いスクラム、そしてチームワークで、ポルトガル代表は2度目の大舞台に爪痕を残したい。
Portugal大健闘
2007年に鮮やかな緑と赤のニューカラーが楕円球の世界を彩って以来、16年ぶりにポルトガル代表がラグビーワールドカップの舞台に戻ってきた。ニックネームは「オス・ロボス」。狼を意味する。彼らは情熱的だ。腹の底から国歌を歌い、涙を流す者もいる。フィールドでは、恐れることなく体をぶつけ、しぶとく食らいつく。勇敢な狼だ。
9月16日、フランスのスタッド・ド・ニースで2023年ワールドカップの初戦を迎え、ウェールズ代表に挑んだ。ヨーロッパのトップグループ(シックスネーションズ)に属する伝統あるチームで、ワールドカップでは3度の4強入りを誇る強豪だ。ウェールズ代表は今大会、すでに1試合戦い難敵のフィジー代表を下し好発進していた。
ラグビーの世界で「ティア2(中堅国グループ)」に分類されるポルトガルが、トップネーションズと戦う機会はめったにない。しかし過去に一度だけ、ウェールズと対戦したことがあった。1994年に地元リスボンで、翌年のワールドカップ出場を目指す予選で激突。11-102と大敗した。
今回もウェールズの楽勝と多くの人が予想したはずだ。トライ量産でボーナスポイント獲得はあたりまえ、大差がつくだろうと。ところが……。
ポルトガルはウェールズを苦しめた。会場を沸かせたシーンが多かったのはポルトガルかもしれない。後半途中までは接戦だった。最終的には8-28で敗れたのだが、29年前の100点ゲームを振り返れば、この健闘は称賛に値する。
ポルトガルは、ウェールズのウォーレン・ガットランド ヘッドコーチが「ミニ・フィジー」と表現するほどアタックにアグレッシブなチームだ。スピーディーにボールをつなぎ、果敢なカウンターでも会場を沸かせた。
序盤から勢いがあったが、ショットチャンスを外して先制を逃し、前半8分にも攻め込みながら不用意なキックで相手にボールを渡して逆襲されたのは痛かった。
何度も何度も果敢に攻めた。しかし、前週のフィジー戦でワールドカップレコードとなる1試合253タックルを記録していたウェールズのディフェンスは堅く、ポルトガルはなかなか得点できなかった。試合後、パトリス・ラジスケ ヘッドコーチと12番をつけたトマーズ・アプレトン主将が試合後の会見で笑顔なく、「フラストレーションを感じている」と口にしたのはこのためだ。キャプテンは、冷静でなければならなかったのに、感情に任せてしまって間違った判断をしてしまったことも何度かあったと反省する。そして、こう述べた。
「私たちはこの試合に本当に勝ちたかった。そのために一生懸命努力してきました。しかし、しっかりしたスクラムを組めなかったし、バックスもミスがあった。そんなことでは、このレベルでは通用しない。我々が得意とする速いラグビーを完全に示すことができなかった。私たちはただ出場して存在感を見せるためだけにここにいるのではありません。競って、勝つためにここにいるんです」
しかし、彼らは思うようなアタックはできなかったかもしれないが、粘り強いディフェンスを最後まで続けた。
FLニコラス・マルチンズは両チーム通じて最多となる18回のタックル(成功率90%)をし、ラインアウトスチールでもチームを救った。2位・16タックルのLOスティーヴィ・セルケイラはブレイクダウンでも奮闘。ポルトガルのターンオーバー成功7回はウェールズを上回った。
楽勝と見られていたウェールズがボーナスポイント獲得となる4トライ目を挙げたのは試合終了間際だった。
プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたウェールズのFLジャック・モーガン共同主将は、「ポルトガルを全面的に称賛しなければなりません。今日の彼らは素晴らしかったと思います。彼らは強いフィジカルで何度も我々に挑んできた」と振り返る。
ポルトガルのスコッドの約半分はアマチュアだという。自身は学位を取得したばかりの歯科医である30歳のアプレトン主将は、「肉屋やパン屋、燭台職人が代表チームの選手だった」と少し昔を振り返る。ワールドカップの準備のために無給で3カ月間仕事を休まなければならなかった者もいる。しかし、彼らは母国の代表として誇らしく、ワールドカップの大舞台でプレーしている。「ワールドカップに出場するだけでも苦労しましたが、いまは自分たちのできることを示したいんです。世界を驚かせたいと思っています」。そしてこうも言った。「アマチュアだってフィジカルで対抗できます」。その強い気持ちがウェールズ戦の奮闘だった。
6歳でラグビーを始め、15歳の時にポルトガルのワールドカップ初出場を見て興奮したというアプレトン主将は、当時の代表選手がラグビー少年だった彼らにとっての最大のアイドルだったように、ポルトガルのラグビーを成長させるために、未来の新しいスターを誕生させるために、このワールドカップにかける思いは強い。若い人たちの心も打つラグビーを見せたい。
実は、ポルトガルラグビー界の育成は着実に実を結んでいる。20歳以下代表によるセカンドグループの国際大会、ワールドラグビーU20トロフィーでは2回準優勝しており、2019年大会では福井翔大や長田智希らを擁したU20日本代表と決勝で34-35の接戦を繰り広げた。今回のウェールズ戦で10番をつけたジェローニモ・ポルテーラ、同じく22歳のLOマルチン・ベーロ、先発WTBホドリゴ・マルタら6人はそのときのメンバーだ。
若手も、大舞台で躍動している。
ラグビーワールドカップ2023は始まったばかりだ。
初出場のチリは日本を相手に健闘、ウルグアイも優勝候補の開催国フランスと競り、ポルトガルも魂を見せた。人々の記憶に残るような好勝負が続いている。番狂わせも、起きるかもしれない。
ポルトガルはワールドカップ初勝利を目指し、このあと、ジョージア、オーストラリア、そしてフィジーに挑む。