2023年9月20日水曜日
ラグビーワールドカップ2023フランス大会予選プールA組
Nice Stade de Nice 収容客数35,983人(テレビ観戦)
38 - 17 Italy勝利
連勝を狙うアズーリ
世界ランキング12位のイタリアは、9月9日のナミビアとの初戦に52-8で快勝し、悲願の決勝トーナメント進出に向けて好スタートを切った。
ナミビア戦でのイタリアは相手のタフな抵抗にフラストレーションを募らせるシーンもあったものの、FWの優位性を生かしてじわじわとプレッシャーをかけ、ナミビアに疲れが見え始めた後半15分以降に4トライを挙げて突き放した。ワールドカップに簡単な戦いなどないことをあらためて実感する半面、最終的に主導権を掌握してボーナスポイントつきの勝利を手にし、初戦としては理想的な内容だったといえるだろう。その経験を経て迎えるウルグアイ戦は、より引き締まったパフォーマンスを発揮するはずだ。
イタリアは12日前のナミビア戦から先発4人を入れ替えた。FWでは右PRがマルコ・リチョーニへ変わり、左LOをNO8ロレンツォの兄、ニコロ・カンノーネにチェンジ。その他の6人は第1週に続いての先発出場となる。
BKはSHにアレッサンドロ・ガルビシが入り、トンマーゾ・アランが15番から10番へシフト。前節FBのパオロ・ガルビシは12番での登場となった。バックスリーでは注目のアンジュ・カプオッソが右WTBからFBに回り、193センチの大型ランナー、ロレンツォ・パニが新たに14番を背負う。
初戦健闘で自信を深める
世界ランキング12位のイタリアは、9月9日のナミビアとの初戦に52-8で快勝し、悲願の決勝トーナメント進出に向けて好スタートを切った。対するアメリカ地区予選1位のウルグアイも、開催国フランスに敗れはしたものの12-27(前半5-13)と奮闘し、フィジーに勝利した前回大会からのさらなる進歩を証明している。いずれも心身とも充実したコンディションで、このプールマッチ第2戦に臨んでくるだろう。
ウルグアイは、パッションを全面に押し出した攻守で優勝候補のフランスを相手に序盤から互角の戦いを展開。前半6分にSOフェリペ・エチェヴェリのピンポイントのキックパスからトライを奪うなど自慢の足技も随所に披露し、スタジアムをおおいに沸かせた。ワールドカップでの白星は過去3つ(1999年、2003年、2019年に1勝ずつ)で、全大会に出場し13勝を挙げているイタリアとは実績で大きな差があるが、プール3位以内に入って次回大会への出場権を獲得するために、なんとしても勝利を手にしたい試合となる。
なお両国は過去4度対戦しており、イタリアの4戦全勝。ただ直近の試合は2021年11月20日のイタリア・パルマでの一戦で、17-10の接戦となっている。その試合に先発した15人のうち、イタリアは12人、ウルグアイは13人が今大会のスコッドに名を連ねた。相手のことを知るメンバーが数多くいることはお互いにプラス材料だが、特にティア1とテストマッチを戦う機会が少ないウルグアイにとっては、一度体を当てている経験は大きな意味を持つはずだ。
9月15日のフランス戦から中5日で臨むウルグアイの先発変更は2人。HOをギレルモ・プハダスから61キャップと経験豊富なヘルマン・ケスレルにスイッチし、右WTBにはバウティスタ・バッソに替わってガストン・ミエレスが入った。その他の13人はポジションも含め前節と同じ並びだ。
キャプテンを務めるのはCTBアンドレス・ヴィラセカ。昨夏の日本代表とのテストシリーズでもチームを牽引した32歳のベテランで、頑健なフィジカルを生かして攻守の要となる。フランスTOP14のカストルで活躍するSHサンティアゴ・アラタの躍動感あふれるプレーにも注目だ。
9月8日に開幕したワールドカップフランス大会もはや3週目に入り、このゲームが全48試合の17試合目となる。そのうちワールドラグビーランキングの下位チームが上位に勝利したケースは、プールDのイングランド(8位)27-10アルゼンチン(6位)、プールCのウェールズ(10位)32-26フィジー(7位)、フィジー(9位)22-15オーストラリア(7位)の3試合だけ(ランキングはすべて対戦前時点)。上位勢の壁の厚さがうかがえる結果だが、今週からは順位の近いチーム同士の対戦が多くなるため、思わぬアップセットが起こる可能性も十分ある。
ウルグアイが満点の気迫で挑んでくることは疑いない。平均年齢25.7歳の若いイタリアにとっては底力を問われる機会だ。熱闘を期待しよう。
Uruguayの健闘
9月14日の初戦でフランスに12-27と善戦し一躍注目の的となったウルグアイが、またまたスタジアムを沸かせた。ワールドラグビーランキングで5つ上のイタリアを相手に、前半を17-7とリードしての折り返し。後半、不用意なプレーで失点を喫し、立ち上がりから全開で飛ばした疲れもあって最終的に17-38と突き放されたものの、気迫満点のファイトでこの日も多くのファンの心をつかんだ。
ウルグアイのパッションと活力は、開始直後から際立っていた。マイボールのキックオフを深く蹴り込み、ディフェンスで鋭く体を当ててペナルティを奪取。SOフェリペ・エチェヴェリのPGはわずかに左へ逸れたが、この試合にかける意気込みをさっそく示す。
最初のスコアが刻まれたのは7分。イタリアがターンオーバーからの切り返しで相手陣ゴール前でのマイボールスクラムを得ると、FW8人がひと塊になったプッシュでウルグアイをめくり上げる。一度目は仕留めきれなかったものの、二度目にWTBロレンツォ・パニがサイドを割って右中間に飛び込み、先制のトライをマークした。
しかしここからウルグアイの反撃が始まる。口火を切ったのは背番号6のFLマヌエル・アルダオだ。8分過ぎに1発目のジャッカルを決めると、16分には相手ラックにすばやく絡んでボールを奪取。さらに19分にもジャッカルでノットリリースザボールのペナルティをもぎ取り、文字通りゲームの流れをたぐり寄せる。
奮闘が結実したのは25分過ぎだ。敵陣ゴール前でFWが粘り強く近場を攻め、イタリアのLOニコロ・カンノーネをシンビンに追い込む。続くラインアウトからモールを形成し、ずらしながら押し切ってインゴールへ。TMOでグラウンディングは確認できなかったが、相手に反則があったという判定でペナルティトライが認められ、イタリアPRダニーロ・フィチェッティにはイエローカードが呈示された。
15人対13人の圧倒的優位に立ったウルグアイは、このチャンスに乗じてなおも激しく攻め立て、34分過ぎからイタリアをゴール前に釘づけにする。辛抱強くアタックを継続して圧力をかけ続け、最後は左ショートサイドを突いてWTBニコラス・フレイタスがコーナーにダイブ。SOエチェヴェリの難しい角度のコンバージョンも決まり、14-7とリードを奪った。
ロスタイムには中盤スクラムからプレーを切らず果敢に攻撃を仕掛け、エチェヴェリが約45メートルのドロップゴールを成功。大きな3点を加え、スコアを10点差に広げてハーフタイムを迎えた。
金星を予感させる展開に、スタジアムが異様な熱気に包まれる中で始まった後半。さらにたたみかけて主導権を握りたいウルグアイだったが、42分にキャプテンのCTBアンドレス・ヴィラセカのタックルが危険なプレーと判定され、シンビンで一時退出となってしまう。一連の流れで迎えた自陣ゴール前での相手ボールアインアウトのピンチはしのいだものの、続くゴールラインドロップアウトからイタリアの連続攻撃を許し、FLミケーレ・ラマロにトライラインを越えられた。
これで息を吹き返したイタリアは、ここから一気にギアを上げて攻め立てる。52分に相手の不用意なノータッチキックを逃さず切り返して敵陣レッドゾーンに攻め込み、迷いなく走り込んだWTBモンティ・イオアネが中央にフィニッシュ。21-17と逆転すると、56分にも中盤のキックカウンターを起点にアタックを継続し、NO8ロレンツォ・カンノーネがタックラーを引きずりながら左中間にねじ込む。
28-17とワンチャンスでは追いつけない点差になったことで精神的な余裕が生まれたイタリアは、61分にも連続攻撃をきっちり仕留め切ってCTBファン・イグナシオ・ブレックスが右中間にトライ。以後はメンバーを入れ替えながら粘り強いディフェンスを軸に試合をコントロールし、70分にはCTBパオロ・ガルビシがPGを追加する。ラスト10分は得点こそ挙げられなかったものの敵陣で時計を進め、38-17でフルタイムを迎えた。
苦しみながらもナミビア戦に続きボーナスポイントつきの勝利を挙げ、勝ち点を10に伸ばしたイタリア。「最後は満足する結果になったが、前半は神経がすり減るようでした」とキアラン・クロウリーヘッドコーチが振り返ったように課題も残る内容だったが、思うようにいかない展開でもきっちり白星を手にできたのは、地力の証といえるだろう。残る2試合は9月29日の対ニュージーランド(日本時間30日04時キックオフ)と10月6日の対フランス(日本時間7日04時キックオフ)。今度はチャレンジャーとして臨むゲームだけに、どのようなパフォーマンスを見せるか注目される。
一方のウルグアイ。前半を先行して終えるなど狙い通りの流れだっただけに、後半の立ち上がりに不用意なエラーが重なり相手に主導権を渡したのは悔やまれるが、これがティア1とのテストマッチ、そしてワールドカップで勝利を挙げることの難しさなのだろう。貴重な学びを得て向かう次戦は、ナミビアとの大一番だ(日本時間9月28日00時45分キックオフ)。こちらも必見の一戦となる。